書を捨てよ、バカになろう!

テキスト、本、ノート、PC。
ここしばらく、親友となり私にくっついていたのは「勉学」。
途中、新しく届いた本は7冊。
読みかけの本は5冊。
どうするの?と、家族の視線。
…そりゃ、読みますとも…もちろん。
たぶんね。
 
 
カウンセラーになりたい私のチャレンジ。
大人になってこうも勉強をすることになろうとは。
自分で踏み出した道とはいえ、途方に暮れています。
 
 
そんな日々の中、私の誕生日がやってきました。
もう、祝わなくても悲しくも寂しくもない年です(笑)
 
 
その日、いつものごとく過ごしていると、長女が、
「おーい、千円ずつ出して。」
と弟二人に声を掛けています。
「なんでー、なんで千円出さなんとー?」
と不満気な真ん中の息子。
娘はチラッとこちらを見て、もごもごと「…誕生日やから…。」
ははぁ、私に千円ずつ、計3千円をくれる気やな。
有難いやら、申し訳ないような。
 
 
「あー。でも何で○○(娘の名前)に渡さなんとー?」
弟は、指図されることに納得がいかぬ風。
いいよ、いいよ、気持ちだけで、そう言いかけてやめました。
娘の表情が、『この集金をきちんとしないと、日本の夜明けはない!』というくらい真剣だったのです。
 
 
なぁ、可愛い娘の気持ちをよぉ、無駄にしちゃいけねぇんじゃねーの?…そう、私の中の江戸っ子が囁きます。先祖代々の肥後っ子ですが。
 
 
大きな声で私は息子二人に言いました。
「あー、産まれてこれて嬉しいな。千円くれ!」
江戸っ子ではないので、粋なセリフが出ることはなく、親らしからぬ言葉が飛び出す始末。
 
 
息子二人は、そんな情けない母親を笑いながら、千円を取りに行きました。
内心、娘の必死な役割を取り上げガッカリさせたかな、と反省。
チラリと娘を盗み見しました。
しかし、娘は弟の後姿を見ながら微笑んでいます。
 
 
優しい子だなぁ、と思いました。
自分が言っても出してくれなかった悔しさよりも、母親に贈与できることに喜びを感じ、柔らかい笑みを浮かべている。
誰に似たのだろう、私だろう。そう思わせてくれ神様、誕生日や。
 
 
それぞれが千円をくれました。
こんなに愛しく感じた千円札は初めてでした。
野口英世の表情が温かいことも知りました。
 
 
三千円を手に情けなく緩んだ顔の私に、娘がくれた言葉は、
「勉強とか子供たちのために使わず、自分の好きな事に使って。」
でした。娘の言葉は、とびっきり粋でした。
 
 
こんなに言葉とは熱いのか、そう思いました。
ふっと耳から入り、胸のあたりで熱を増します。
娘を見つめながら緩んだ表情のまま、「わぁ~」という気の抜けるような言葉。
私はすっかり感動し、あほ丸出しです。
 
 
自分の好きなものを買う。
「よし!それなら、ビールとお刺身買って来よう!!」
あほ丸出しのまま言うと、子供たちは満足そうに笑っています。
それでこそ、私たちのお母さんだ、と言わんばかりに。
どういうことだ、そういうことか。
 
 
三千円を握りしめスーパーに向かい、この中で私ほど幸せな気分で立っている人はいないだろう、と得意げにレジに並び〝私のための〟ビールとお刺身を買いました。駄菓子のブラックサンダー3つは、子供達へのほんのお返し。
 
 
さぁ、いよいよ、久しぶりの晩酌です。
働いていたころは毎晩350mlを一本。
今、その習慣はなくなっています。
子供たちはニヤニヤしながら見ています。
 
 
正直、この時点で胸はいっぱい、なにやら酔ったような気分。
でも、キミたちに見守られながら飲む『特別なビール』は格別な味だろう。
 
 
プルタブに指を掛け、力を入れて引くと、「シュパッ!」といい音がします。
 
 
「有難う。またひとつ大人になったよ。」
主役の挨拶を軽くし、缶ビールとブラックサンダーで乾杯。
ゴクゴクとやりました。
のどにくる刺激、食道を通る冷たさ、ほろ苦い後味、胸に迫る感激。
 
 
6つの可愛い目玉が見つめています。
せっかくの祝いだ、泣くもんか。
 
 
「あ~、うまいね、子供の金で飲むビールはうまい!!」
見守る子供たちはゲラゲラ笑い、バカだ、バカだ、バカなお母さんだ!と囃し立てました。
その笑顔が最高で、私も一緒にゲラゲラ笑いました。
 
 
根を詰め過ぎていたな。時には息を抜こう。
そう立ち止まれたひと時でした。
たまには書を捨てバカになることも必要じゃないのか。
私には大切な気づきとなりました。
週に一度くらい、こんな日があってもいいのではないか。
 
 
ん?子供たちの声が聞こえます。
「たまには、じゃなくていつもバカたい!」
なるほど、教育の本を追加して取り寄せようと思います。
 
 
では、また。
なんせ、今日は週に一度のバカになる日と決めていますから^^
 
 
皆さま、お疲れさまでした。
乾杯!!